AML / CFTスタンダードコースとは
概要
一般社団法人金融財政事情研究会の金融業務能力検定の種目の1つ「AML / CFTスタンダードコース」試験を受けて合格したのでその記録です。
基本楽勝と考えていいと思いますが、あまりに舐めすぎると落ちますよ。
いわゆる「マネロン対策」関係の資格で、AMLとは
「マネーロンダリング防止(anti money laundering)」、CFTとは「テロ資金供与対策(combating the financing of terrorism)」をそれぞれ意味します。
銀行等の金融機関の本部担当者および営業店の管理者、窓口担当者等が受験対象とのこと。
試験範囲としては、試験概要にはざっくり「1.金融犯罪 2.FATF 3.国内法規制 4.リスクベース・アプローチ 5.管理態勢 6.顧客管理 7.疑わしい取引」の7項目としか書いていません。
正直、現職において今年度から必須資格となったので受けただけ。
他の集合試験がコロナの関係でほとんど中止になっているので(こちらはCBT方式だから開催?)、ぶっちゃけスケジュールに入れていたことすら直前まで忘れていました。
終わってみれば本当にしょーもない試験(失礼)でしたが、少しググってみてもほとんど解説しているサイト等はないので(必要がないから?)、せっかくですので備忘録的に残します。
CBT方式について
CBT(Computer-Based Testing)とは、文字通りコンピュータを使用して実施する試験のことで、今回の資格(その他金融業務能力検定のほとんど)においては2018年度から採用されました。
ちなみにこのCBT、金融業務能力検定を始めとする金融系や、無線技士や半導体技術士などのテクノロジー系、健康・福祉…日本酒検定に至るまで幅広く導入しているみたいです。
CBT方式のメリットはなんといっても手軽さで、試験予約の開始も「通年」、試験日程も「通年配信」という表現になっています。
つまり、受けようと思ったらほぼいつでも好きな時に受けられる資格試験ということになります。
私は今回初めてCBT方式による受験となりましたが、拍子抜けするくらい簡単に予約・受験ができました。
だから強いて言うならデメリットは手軽過ぎてなかなか「資格試験を受ける」という実感が湧かないということでしょうか。
後で書きますが私も全くと言っていいほど緊張感が持てませんでした。
余談ですが、同きんざいの「マイナンバー保護オフィサー」「個人情報保護オフィサー」は従来のPBT(Paper-Based Testing)方式、紙媒体の試験の時に合格しました。
その2つはたしか毎年2〜3回程度(曖昧ですが)の実施でしかも2つの試験が同日に午前午後と実施されるものでした。
そのため、複数の資格試験を早くクリアしてしまいたい私は同日に2つ受験しました。
どちらも今回のものと同じく決して難しくはない試験でしたが、当時少ないチャンスと思いそれなりにしっかり勉強して合格した私からすると、今回のCBT導入は「なんだかなぁ…」という思いです。
当時から今の方式だったならば、もっと小分けにマイペースに取得できたことでしょう。
まぁいずれにしろ、現在の私のように複数資格取得を目指している人からすると、「他の予定のすき間スケジュールを活用できる」のは大きなメリットと思います。
(※CBT方式の説明に「同じ種目については受験日翌日から起算して30日間は再受験できない」という趣旨の文言があるため、そこは注意が必要のようです。「費用を気にせず安易に何度も受けよう」は考えものです)
勉強方法メモ
勉強道具(問題集等)
まず公式の「書籍」については、株式会社きんざいで販売する「AML / CFTスタンダードコース試験問題集」しかないようです。
2020年度版 AML/CFTスタンダードコース試験問題集 [ 一般社団法人金融財政事情研究会 検定センター ]
同㈱きんざいの試験対応通信講座なるものがあるようですが、「Q&A営業店のマネー・ローンダリング対策実践講座」は、2ヶ月コースが受講料11,000円、3ヶ月コースが13,200円と相変わらずぼったくりです。
実知識が高いレベルで必要になる方を除き、私のようにただ「合格」が欲しい方は絶対に受講する必要はありません。
つまり、手っ取り早くインプットを行う、いわゆる「参考書・テキスト」が存在しないので注意が必要です。
一応自分は現場で使う程度の多少の知識があったものの(といっても海外送金とかは全く専門外ですが)、完全に専門外の方は一体どのように勉強すればいいのか。
…それは、実際に公表されている関係省庁・団体の資料や、関係諸法令だと思います。
その中でも、
こちらの中段、
「監督指針・事務ガイドライン」>「その他ガイドライン」内にある
おそらくこれが一番大事。
というかほぼメインテキスト。
金融庁の立場から見たマネロン対策が一通り書いてある資料です。
実際に問題文においても、「金融庁ガイドライン(※本資料のこと)等における『○○』に関する次の記述のうち~」と始まる問も多い。
他にも、犯罪収益移転防止法関係も大事。
警察庁・JAFIC(犯罪収益移転防止対策室)のページに様々な資料が置いてあります。
この中でも、目次の「犯罪収益移転防止法の解説、パブリックコメント」のところにある『犯罪収益移転防止法の概要』で文字通り概要を掴みつつ、
同じく目次から「年次報告書など」のところにある『年次報告書』『評価書』『危険度調査書』も知識補完できます。
この試験の範囲である「顧客管理」(本人確認)や「疑わしい取引」についてはこれらで勉強するのが良いでしょう。
営業現場で使う細かい知識と、これまでの改正の背景等についてもまとめてくれています。
重要ポイントメモ
マネー・ローンダリング対策等の主要な沿革について、国際的な動きと日本国内の動きとそれぞれおおよそで構わないので頭に入れておく必要があります。
先程の紹介と同じく、警察庁・JAFICのHPの年表が私にはわかりやすかったです。
要は、「現状」だけでなく「なぜ今の法律が産まれたのか」「国際的な動きに追随する形で日本国内においてもこうなった」等を理解する必要がありそうです。
これまでのJAFICのページ等にも度々登場する、「FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)」という国際組織があります。
(今回の試験においても大変重要なキーワードです)
この組織は参加国同士で国際基準の遵守状況の監視(相互審査)を行っているのですが、我が国においては先日2019年の秋に「第4次対日相互審査」が実施されたばかりです。
(というかこのスケジュールがあったからこそ、注目を浴び始めた資格といっても過言ではないと思います。実際に民間の個別金融機関に対しても審査団からインタビューがされる等予定に入っているようです)
過去2008年に実施されたFATF第3次対日相互審査において、日本は多くの法制度上の不備事項の指摘を受けており(要はボッコボコにされた経緯があり)、それもあって今回は気合が入っているというわけです。
肝心の報告書の公表、つまり今回の審査結果の発表については2020年の夏頃の予定となっており、2020年5月現在はその実施が終わり結果発表との狭間時期にあります。
だからきっと試験問題を作る側も大変だったことでしょう(笑)
通年実施の試験で、現在進行形のイベントの問題を作るというのは少し違和感があります。
そのため、考えすぎかもしれませんが「第4次対日相互審査」についての問題は少なかったように思います。
あったとしても問題集だと『秋に実施される予定の第4次対日相互審査』という表現だったものが無理やり『昨年末に実施された第4次対日相互審査』と変わっていたり。
また、私が受けた時には5月であるにも関わらず何故か2019年度試験として受けたのですが、現在は上で紹介した通り2020年度試験版の問題集も既に発売されていました。
ということは2020年度試験においても、まだ公表されていない相互審査の結果については反映が間に合うはずもなく、しばらくは違和感のある試験範囲となるのではないでしょうか。
(逆に言うと第4次対日相互審査の結果が反映された2021年度以降のこの試験はその内容がメインになるかもしれませんね)
基本的には四択問題ですし、唯一の「適切」or「不適切」を選ぶ単純なよくある試験です。
…ですが、たまに「えっ? そこ聞く?」という問題もありました。
先程あったように年表的に関係諸法令の遷移を問われるのですが、例えば「FinTechの文言が盛り込まれたのは○○年の勧告ではなく▲▲年の勧告のタイミングなので①は不適切」みたいな。
…いえ、私は正直資格が欲しいだけなのでいいんですが、それって覚えて本当に意味あるの? と少し疑問に思ってしまいます。
実際に金融機関の仕事に活かすなら、「現在の法令においてその項目が入ってるかどうか」などのほうが余程役に立つような…。
あとは、個人的には各法令やガイドラインが求めるレベル感についても覚えづらいと感じました。
「対応が期待される事項」と「努力義務」と「義務」は違います。
例えば「この法律ではあくまで努力義務であり、義務とは明記されていない」のような解説のもと不適切とされていた記述も少なくなかったため、そのややこしさに苦しめられました。
実際の試験
試験日当日
人生初のCBT試験。
時間もけっこう融通がきいて好きな時間が選べたので、せっかくの休日午後は家族と過ごす事を考えつつも朝試験前に少しは勉強もできる10時からの回を選択。
場所はコロナ禍の影響もあって家の近くはやっていない所も多かったので定期圏内の都市部を選択。
会場に着くと同じ時間は私以外に2人だけでした。
しかもスタッフさんから受けている説明内容や持っている参考書等を見る限り全く別の資格試験。
会場は、仕切りの薄い漫画喫茶みたいなスペース。
あれだ、あれ。
就活の時のなんていったっけ…SPI? 受けるとこのイメージ。
荷物をロッカーにしまい、簡単な不正対策の持ち物検査(コロナ禍なのでマスクの裏まで…)。
時間になるとパソコンの前に案内されて、簡単な操作方法を説明のうえすぐに試験が始まる。
制限時間は100分ですが30分くらいで終わりました。
これがCBT方式のメリット(でありデメリット?)なんだと思いますが、結果も拍子抜けするくらい一瞬で画面に表示されます。
「印刷」ボタンを押してスタッフさんのいる受付へ。 終了。
まとめ
結果は…
受かってました!
いや、あぶね! ギリギリ(笑)
あと2問不正解だったら不合格でした。
ちょっと余りにも舐めてて、またどうせ中止だろうと思っていたこともありましたが(言い訳)、例の落ちると約一ヶ月再受験できない件を考えるともっと勉強しておけば良かったと焦りました。
まぁ受かったからいいか。
結果的には振り返ると試験前日に問題集を1.5周回した程度で受かったわけですし、簡単な試験には違い無さそうです。
でも不安な方は3周はやっといた方がいいかも。
…参考になれば幸いです。
それでは。